
■ はじめに:「やめたくはない。でも、心から納得しきってはいない」という、静かなサイン
一度形になり、お客様にも受け入れられ、ある程度の成果を上げている商品やサービス。それは、私たちにとって大切な存在であり、簡単に手放せるものではありません。
それなりに売れ続けている。
「これが欲しい」と求めてくれる人が、今も確かにいる。
今さら方向性を大きく変えるのは、労力もかかるし、正直なところ怖い気持ちもある。
しかし、そんな安定した状況の裏側で、ふと、こんな問いがあなたの心に浮かんでくることはないでしょうか?
「この商品やサービスは、今の私が、“ほんとうに、心の底から届けたいと願っているもの”なのだろうか?」と。
もし、そんな微かな、しかし無視できない違和感を覚えているとしたら。それは、あなたのビジネスと、あなた自身の内なる成長が、新たな調和を求めているサインなのかもしれません。
私はここで、ひとつの大切な問いを投げかけたいと思います。
「その商品、そのサービスには、あなたの“今の生きた声”が、ちゃんと込められていますか?」
■ あなたのクリエイションには、「過去の私のエネルギー」が、今も宿り続けている
特に、ビジネスがある程度うまくいっているときほど、私たちが提供しているサービスや商品は、「過去の自分」が情熱を注ぎ、心血を注いで設計した“そのままの形”で、更新されることなく市場に残り続けることがあります。
- 3年前の、まだ今とは異なる価値観を持っていた自分が、一生懸命に設計した講座の骨子。
- 本当の自分をまだ十分には開示できず、どこか遠慮がちだった頃に、必死でひねり出したコピーの言葉たち。
- お客様の表面的なニーズに応えることを優先しすぎた結果、自分自身の本質的な願いとは少しズレてしまった商品構成。
それらは、紛れもなく「当時の自分」にとっては最善であり、必要不可欠なものだったはずです。そのエネルギーがあったからこそ、今の成果がある。それは間違いありません。しかし、もし“今の自分”が、そのかつてのエネルギーや表現方法に、もはや心からの共鳴を感じられなくなっているとしたら。その時、私たちが届けようとする言葉やサービスには、以前のような生命力や、人の心を動かす真の力が宿りにくくなってしまうのではないでしょうか。なぜなら、語り手であるあなた自身の「今」が、そこに不在だからです。
■ コンセプト棚卸しのススメ:「心が動かない商品」は、進化と再設計の合図
では、自分の商品やサービスが、今の自分と本当に響き合っているのかどうか。その「棚卸し」をするために、私は自分自身に、こんな問いかけをしてみることをお勧めしています。
- 「いま、そのサービスについて誰かに語るとき、あなたの胸は自然と熱くなりますか? 言葉に、情熱がこもりますか?」
- 「価格や機能、メリットといった情報よりも先に、“このサービスを通して、相手にどんな感情を届けたいのか”という、内なる願いがクリアに浮かんでくるでしょうか?」
- 「このサービスを受け取った相手が、その結果としてどのように変化し、どんな新しい日常の“風景”を生き始めるのか、そのビジョンが、あなたの心にはっきりと見えていますか?」
もし、これらの問いに対して、淀みなく、心の底から「YES」と答えられない部分があるとしたら。それは、決してあなたが間違っていたり、怠けていたりするわけではありません。むしろ、あなたのビジネスや、あなた自身の探求が、次なるステージへと“脱皮するタイミング”を迎えている、という大切なサインなのかもしれないのです。
■ 売上を捨てなくてもいい。“言葉”と“届け方の構造”を変えれば、ビジネスは再起動できる
ここで多くの人が陥りがちなのが、「今のサービスに納得できない=これまでやってきたことを全部捨てて、全く新しいものを作り直さなければならない」という、ゼロか百かの思考です。しかし、それは多くの場合、必要以上の恐怖心や労力を生み出してしまいます。
私はむしろ、こう捉えています。
「必ずしも商品やサービスの“核”そのものを変える必要はない。まずは、それを包む“言葉”と、それを届ける“関係性の構造(届け方)”を見直し、今の自分に合わせて再設計するだけで、ビジネスは驚くほど新しい生命感をまとって再起動できることがある」と。
具体的には、もう一度、原点に立ち返って問い直してみるのです。
- 今の私は、この価値を「本当は誰に」届けたいと願っているのだろうか?
- その人に届けるためには、「どのような文脈で、どのような物語として」このサービスを伝えるのが最も自然で、心に響くだろうか?
- そして、私はその人の「どんな心の痛みや、満たされない願いの、どこに」応えようとしているのだろうか?
これらの問いに対する答えを、今の自分の感覚に照らし合わせて丁寧に再定義し、そこから生まれる新しい言葉やアプローチで発信を試みてみる。それだけで、同じ商品やサービスであっても、まるで“全く別の生命が吹き込まれた”かのように、あなた自身も、そして受け取る相手も、新たな輝きや意味を見出すことがあるのです。
■ 結びに:「今の自分」が、もう一度、心から語りたくなるサービスへ
あなたが、心の底から語りたくなるもの。
誰かに届けたくて、仕方がなくなるもの。
それについて考えると、自然と言葉やアイデアがあふれてくるもの。
それこそが、今のあなたにとって、そしてこれからのあなたにとって、“本当に届けるべき、価値あるサービス”の姿なのではないでしょうか。
過去の成功や、これまでのやり方に固執する必要はありません。あなたは、日々変化し、成長し続ける存在です。だから、あなたのビジネスもまた、あなたと共に変わっていくことを、どうか自分自身に許してあげてください。むしろ、あなたが変わり続けるからこそ、あなたの言葉やサービスは濁ることなく、常に新鮮な輝きを保ち続けることができるのです。
「売れているのだから、変えるべきではない」という恐れからではなく、
「今の私が、心から届けたいと願うからこそ、変えてもいいのだし、変えるべきなのだ」という、内なる声に導かれて。
この視点に立ったとき、あなたのビジネスの再構築は、何かを失う“手放し”ではなく、新しい自分として、新しい価値を世界に生み出していく、喜びに満ちた“再誕”のプロセスとなるでしょう。